4回に渡って、感情がその人個人に与える影響について紹介してきました。
今回は感情が他者との関係でどう働くのかを紹介していきたいと思います。
「公共財ゲーム」と呼ばれる研究です。
このゲームは、他者と協力する事で大きな利得が得られるものの、他者をあてにして自分が怠けたくなる状況(ただ乗り)をつくりだし、人間の行動を評価する事が可能なゲームです。
5名でグループを作り、最初にそれぞれが10,000円を与えられます。そして、参加者それぞれが手持ちの10,000円の中から、いくらをグループのために支払うかを決定します。実験者はそれぞれが出し合った金額を合計し、その倍の金額を5名全員に均等に分配する、といった具合です。全員がたくさんの金額を支出すると、それぞれが得られるリターンもより多くなるものの、自分は支出せずに、つまりリスクを取らずにお金を儲けようとする戦略を取ることも可能です。
あるグループの実験参加者には素早く決断を下すように(10秒以内)、もう一方のグループの実験参加者にはゆっくり決断するように(10秒以上)指示がされました。その結果、素早く意思決定を求められる条件の方が、じっくり考える条件よりも、より多くの金額を支出する、すなわち協力的になることが示されました。
つまり自分が所属する集団の中では、人間は熟慮しなくとも、自ずと協力的になる自動的な感情の働きを備えているということです。
思いのほか、私たちは協力的で、他者との良好な関係を築くことに長けているのですね。
京都大学こころの未来研究センター 阿部修士淳准教授の寄稿より