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カテゴリー別アーカイブ: 裁判事務

遺留分侵害額の請求調停

私が遺言執行者になっている案件の話です。

Sさんが遺言書を遺してお亡くなりになりました。
遺言書の内容は、全財産をSさんの3人の姪に遺贈するというものでした。

Sさんには一人息子がいます。
息子さんは障害があり、成年後見人が付いています。
息子さんには多額の財産を既に渡しております。

さて私は遺言執行者としてSさんの全財産を3人の姪たちに渡しました。
すると当然と言うべきか、息子さんの成年後見人である弁護士から遺留分の請求が
きました。

姪たちは遺留分の支払いを拒絶します。
「・長年、Sさんの身の回りの世話をしてきたのは私達3人である。
・息子さんは障害がありSさんの世話は全くできなかったし、
既に多額の財産を渡している。
・何よりSさんの遺言書がある。
・何なら息子さんのために成年後見人の手続きをしたのも私達である。」

Sさんの財産を9000万円とします。
姪たちには既に3000万円ずつ渡しております。
息子さんの遺留分請求額は半分の4500万円です。
遺留分請求をそのまま受け入れれば、姪たちは1500万円ずつ息子さんへ
支払うことになります。

こちら側も弁護士に対応を依頼しました。
ある程度の支払いは仕方がないとして、あとは落としどころです。
1年程度かかりましたが、この度決着がつきました。
姪たちが息子さんへ750万円ずつ支払うという内容でした。
本来の遺留分額の半分です。

この決着が成功なのかどうかは分かりません。
ただ、日本の遺留分制度には問題があると思います。
相続人であるというだけで、遺留分が請求出来てしまいます。
遺言書があったとしてもです。
アメリカでは生存配偶者の保護を目的とした遺留分制度があり、
成人した子や親に遺留分の権利はありません。
もう少し合理的な制度にできないものかと思います。

相続を放棄することができる理由

どんな場合に相続放棄をすることができるのでしょうか。
借金が多い場合しか、相続を放棄することができないとお考えの方が
多いのではないでしょうか。

裁判所が用意している「相続放棄申述書」によると、放棄の理由として
以下の6つが用意されています。

1.被相続人から生前に贈与を受けている
2.生活が安定している
3.遺産が少ない
4.遺産を分散させたくない
5.債務超過のため
6.その他

債務超過のため放棄をされる方がやはり多いです。
3番4番は経験したことがないです。

生前に被相続人と何らかのトラブルがあって疎遠になっている、とか
両親が幼いころに離婚して長年会っていないとか様々な理由により、
被相続人の相続に関与したくないというご相談も数多くあります。
その場合は「その他」を選択して、事情を簡便に記載すれば大丈夫です。

遺留分の権利が強すぎると思う件

遺留分とは、被相続人の遺産のうち、兄弟姉妹を除く法定相続人に対して保障される、
最低限の遺産取得分のことです(民法1042条1項)。

この遺留分の権利。強すぎないかって思うんですよね。

私が遺言執行者として関わっている案件です。

Aさんがお亡くなりになりました。
相続財産は5000万円。
Aさんは遺言書を遺しており、財産全部をAさんの身の回りの世話をしてくれた
姪っ子3名に均等に遺贈するというものでした。

さて、Aさんには一人息子のBさんがいます。
Bさんは障がい者で、病院暮らしです。
結婚はしておらず、子供もおりません。(相続人がいない)
すでに高齢で社会復帰の可能性もありません。
Bさんが困らないよう、成年後見制度を利用して、金銭的な援助は十分に施してあります。

ここでAさんが亡くなりました。
遺言書があるとは言え、Bさんには遺留分を請求する権利があります。
その金額2500万円。
成年後見人から姪っ子に遺留分の請求がきました。

Bさんの権利は法律で認められた正当なものだというのは分かるのですが、
Aさんを長年面倒見てきたのは姪っ子達。
Bさんには十分な援助をしており、仮に相続したとしてもその財産を承継させる
相続人がいません。

今現在弁護士にお願いして訴訟となっております。

ただ言えるのは、誰も間違っていないということ。
Bさんの権利は正当だし、後見人の主張も正当。
姪っ子の言い分も正当。
ただただ遺留分の権利が強すぎるんですよね。

欧米では、遺留分を請求できるのは配偶者と未成年の子供だけで、
成人に達した子供の遺留分はないそうです。
日本もこれに倣って欲しいなと思います。

その自筆証書遺言、登記申請に使えます?

遺言書があると、相続登記手続きは楽になります。

遺言書がない場合、相続登記に必要な書類は、
故人の出生から死亡時までの戸籍と相続人全員の現在戸籍を集める必要があり、
これがなかなか面倒です。

それに対して遺言書がある場合に必要な書類は、
故人の死亡の旨の記載がある戸籍と、遺言書で指定を受けた財産を譲り受ける
相続人の戸籍です。
楽ちんですね。

さて遺言書が自筆の場合、そのままの状態で登記申請に使うことはできません。
家庭裁判所で検認手続きが必要となります。
あらかじめ定められた日時に相続人が集まり、裁判所主導のもと、相続人の面前で
遺言書が開封されます。
そして遺言書に裁判所の検認が済んだ旨の証明文が追加されます。
この証明文がついて初めて登記申請ができるようになります。

なお、裁判所での開封時、相続人全員が揃ってなくても構いませんし、
遺言書の内容が有効かどうかなどの判断はなされません。
あくまで外見上の形式的な手続きです。

関西スーパーの経営統合を巡る訴訟 日本経済新聞

関西スーパーとH2О系スーパー(イズミヤ・阪急オアシス)の統合に
関する訴訟は、身近なスーパー同士の話しなのでとても興味があります。

関西スーパーの経営統合に関する決議が、可決に必要な3分の2をわずかに
上回る66.68%の賛成で承認されました。

ところで訴訟の論点は、投票終了後に投票内容を株主の希望に応じて
「棄権」から「賛成」に変えた手続きが妥当かどうかでした。

大阪高裁が重視したのは、株主の意思を尊重した点です。
一方一審の神戸地裁は「用紙を回収箱に入れた以上、軽微かつ形式的な誤りだったとしても訂正できない」として形式を重視しました。

大阪高裁は、当該の株主が事前に賛成の議決権行使書を送付しており、総会会場で棄権とみなされる白票を誤って投票したとし、「株主の意思が投票用紙と異なっていたと明確に認められ、賛成票として扱うことは許容される」、「決議の方法は、法令に違反するとも、著しく不公正であるともいえない」としました。

この大阪高裁の決定は、総合的な観点からの柔軟な判断で、私は妥当であると思います。

期日の続行だなんて 聞いてないよ~

家賃滞納による建物明渡訴訟での出来事。

コロナの関係もあって、6月25日にようやく期日を迎えた。
申し立てからかれこれ3カ月。

期日当日、相手方は来ず、即日結審ということで終了。
やれやれ、執行手続きに入るかと思っていたところ裁判所から連絡が。

「本日の郵便で被告から手紙があり、風邪を引いてこれない」とのこと。
それで裁判官が期日の続行を決定。
次回期日いつにしますか?
だなんてやってられないよまったく。
そんなの裁判の引き延ばし作戦に決まってるし。

それでも裁判官の判断には逆らえないのでした。

依頼主にどうやって説明しようか・・・・
郵券の追加も求められるしなぁ

裁判官の独立性

所有権移転請求権仮登記の抹消登記手続きを求める訴訟です。
昭和の10年代に登記された仮登記で、相手方が不明であり、
公示送達により訴訟手続を進めています。

先日、第1回の口頭弁論期日があり、
時効だし、公示送達だし、今日で結審するんだろうなぁと
思いながら裁判に臨みました。
別の裁判で、公示送達だからもう結審しましょうかと
別の裁判官が言ってたことを思い出したからです。

しかし今回の裁判官は、「公示送達だから慎重にいきます」
と、原告の本人尋問をするべく、第2回の期日を入れました。

改めて裁判官の独立性を感じました。

「もう80年も前のことだし、どうせ時効なんだし、もういいやん!」
って言いたかったけど、言えなかった・・・

相続放棄手続きの管轄裁判所

相続放棄のご依頼を頂きました。

亡くなられた方の最後の住所地(住民票の住所)は南あわじ市とのこと。
管轄は最後の住所地を管轄する裁判所になるので、
神戸家庭裁判所洲本支部ということになります。

相続放棄の申立ては郵送でもできます。

尼崎から洲本まで交通費がかかってしまうので、
郵送で対応することになります。

必要書類は、
1.被相続人の住民票除票
2.被相続人と依頼者の相続関係が分かる戸籍

戸籍などは全て当事務所で取得させて頂きます。

賃貸物件がゴミ屋敷になってしまった

賃貸物件がゴミ屋敷になってしまった。
どうすればいいのか?という相談が家主さんからありました。

・家主が何度注意しても、ゴミを片付けようとしない
・隣室があまりの悪臭に耐えかね出て行った

相当ひどい状態だと思われます。

「賃借人は賃貸人に対し、賃借物件を明け渡すまで、善良な管理者の
注意をもって保管しなければならない」という善管注意義務なるものが
賃借人は課せられています。

賃借人はこの善管注意義務に違反しているのですが、違反している
からといって、直ちに家主がゴミを片付けていいわけではありません。

期限を区切ってゴミを片付けるよう内容証明郵便をもって通知し、
何もしなければ、建物明渡訴訟を申し立てることになります。

手続きには数ヶ月時間がかかってしまいます。
今から夏本番。
さらなる環境悪化が心配されます。

3か月経過後の相続放棄について

「1年前に亡くなった叔母の借金の督促状が、先週、私のところに届きました。
葬儀が終わったあとで、叔母名義の家をどうするかの話は出ましたが、借金の
ことは一切聞いていませんでした。相続放棄は3か月以内にしなければならない
とありますが、私のケースで債務を免れることはできないでしょうか」
という相談です。

「相続財産の認識が全くない場合には、3か月の熟慮期間は進行しない」
というのが裁判所の考え方です。

今回の相談の場合、叔母の債務のことを知らず、そのことに過失は無いと
思われますが、遺産である叔母名義の家がある事を知っていたので、
承認するか放棄するかの選択をすべきであった、つまり熟慮期間は経過
していると考えられます。
また、その家を相談者以外の相続人が単独取得し、相談者は何も相続
しなかったとしても、相談者がその登記手続きに協力した場合には、自己の
相続分を処分したとして単純承認となり、相続放棄できなくなるおそれがある
ので注意が必要です。

以上兵庫県行政書士会・行政ひょうご連載「法情記」岡田清人弁護士著
からの抜粋でした。