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カテゴリー別アーカイブ: 相続

相続土地国庫帰属制度~坂出市~

その事実を知ったのは、坂出市からのお願いの文書でした。
「空き地の管理および清潔保持について(お願い)」と題された文書には
1通の写真が同封されていました。
雑木林
建物があるはずなのに、その建物が全く見えないほど木々が生い茂ってます。

4年前に母親から何となく相続した坂出市の不動産。
見たことも聞いたこともない不動産の状況に愕然とした依頼主は、
不動産の処分方法をネット検索しました。
検索の結果、売却できるような不動産ではなく、
業者に100万円程度支払って引き取ってもらうという方法しかありませんでした。

そこでもう一つの方法として見つけたのが、「相続土地国庫帰属制度」
今回、この制度が使えるかどうか、私のところに依頼が回ってきました。
この制度、使うには条件があります。
1.建物がある
2.抵当権などの担保権や使用収益権が設定されている
3.境内や墓地など他人に利用されている
4.土壌汚染されている
5.境界が明らかでない
6.所有権に争いがある
7.崖がある
8.地上や地下に、車・廃棄物・樹木などの障害物がある
以上に1つでも当てはまれば、この制度は使えません。

依頼主は生まれも育ちも神戸の方で、今回の坂出市の不動産は
全く知らないので、近々現場調査に行ってこようと思います。

建物の解体、樹木の伐採、境界の明示などで100万円を
超えてしまうようなら、業者に引き取ってもらった方が簡便で安い
ということにもなります。

遺留分侵害額の請求調停

私が遺言執行者になっている案件の話です。

Sさんが遺言書を遺してお亡くなりになりました。
遺言書の内容は、全財産をSさんの3人の姪に遺贈するというものでした。

Sさんには一人息子がいます。
息子さんは障害があり、成年後見人が付いています。
息子さんには多額の財産を既に渡しております。

さて私は遺言執行者としてSさんの全財産を3人の姪たちに渡しました。
すると当然と言うべきか、息子さんの成年後見人である弁護士から遺留分の請求が
きました。

姪たちは遺留分の支払いを拒絶します。
「・長年、Sさんの身の回りの世話をしてきたのは私達3人である。
・息子さんは障害がありSさんの世話は全くできなかったし、
既に多額の財産を渡している。
・何よりSさんの遺言書がある。
・何なら息子さんのために成年後見人の手続きをしたのも私達である。」

Sさんの財産を9000万円とします。
姪たちには既に3000万円ずつ渡しております。
息子さんの遺留分請求額は半分の4500万円です。
遺留分請求をそのまま受け入れれば、姪たちは1500万円ずつ息子さんへ
支払うことになります。

こちら側も弁護士に対応を依頼しました。
ある程度の支払いは仕方がないとして、あとは落としどころです。
1年程度かかりましたが、この度決着がつきました。
姪たちが息子さんへ750万円ずつ支払うという内容でした。
本来の遺留分額の半分です。

この決着が成功なのかどうかは分かりません。
ただ、日本の遺留分制度には問題があると思います。
相続人であるというだけで、遺留分が請求出来てしまいます。
遺言書があったとしてもです。
アメリカでは生存配偶者の保護を目的とした遺留分制度があり、
成人した子や親に遺留分の権利はありません。
もう少し合理的な制度にできないものかと思います。

象牙の印鑑の処分~ワシントン条約~

印鑑屋さんのご主人がお亡くなりになりました。
父親から引き継いで2代目でした。

難病にかかり、10年ほど施設に入ってお亡くなりになったので、
印鑑は10年ほど放置状態にあります。
ご親戚筋によると、象牙の印鑑もあるようなのですが、
保存状態が気になるところです。

さてこの象牙の印鑑。
簡単に処分することはできません。
ワシントン条約という国際間取引に日本も批准しております。

以下環境省のHPより。

国内において象牙製品の取引(売る・買う・あげる・もらう・貸す・借りる、以上のすべての行為について有償無償は問いません)は原則禁止されています。例外として商業取引できるのは、事業者登録を受けている事業者から象牙製品を入手する場合と、あらかじめ登録を受け登録票の付いている全形牙を登録票と共にやり取りする場合です。なお、自ら持っておくだけという所有には制限はありませんので、例えば登録事業者から購入した象牙製品をコレクション等として所有することや条約適用前から家にあった全形牙を登録せずに所有し続けることは可能です。また、当代の所有者がお亡くなりになり、相続として引き継ぐ場合の取引は例外として認められています。

ということは、
象牙の印鑑は全形牙ではないので、事業者登録を受けている業者に買い取ってもらう
ことは可能ということでしょうか。
検索したら、業者がめっちゃ出てくるし・・・
どうしたもんやら・・

お仏壇の処分~仏壇じまい~

今回はお仏壇の処分のお話です。

相続が発生し、仏壇の引き取り手がなく、処分するしか方法がない時があります。

ご存じでしょうか。
お仏壇は、他の廃棄物と一緒に処分することはできません。

まず、ご住職さんにきてもらって魂を抜いてもらいます。
その後、仏具屋さんに持ち込むか来てもらうかして仏壇を引き取ってもらいます。
仏具屋さんにてお仏壇を解体してもらい、初めて処分をすることができるように
なります。

魂を抜くためのお布施で1~3万
仏具屋さんの引き取り・解体で5~7万
全部で10万以内っていう感じでしょうか。

相続手続代理人による株式売却専用口座の開設

証券会社の相続手続きについて。

SMBC日興証券と大和証券預かりの株式の相続手続きを行いました。

依頼理由は、相続開始時は、ご本人でやろうとされておられたのですが、
住民票登録の住所と現在住んでいるところの住所が異なり、証券会社との
やり取りがうまくいかなかったとのことでした。

弁護士や司法書士などの相続手続代理人を選任すると手続きは楽です。

①相続人情報を確認するため、戸籍を収集し、法定相続情報を作成します。
②相続人全員から相続手続代理人への相続手続きのための委任状をもらいます
(印鑑証明書付)
③相続手続代理人と証券会社でやり取りを行います。
証券会社において委任状の確認が終われば、証券会社へ提出する本人確認書類は
相続手続代理人のものを提出することになります。
また書類関係は全て相続手続代理人の署名と実印の押印で進めていきます。
④相続手続代理人名義での「株式売却専用口座」が開設されます。
株式売却専用口座へ株式の移管後、株式の売却が行われて手続き終了となります。

証券会社とは、電話と郵送でやり取りすることになります。
依頼主から証券会社へ電話連絡したり、支店へ赴いたりする必要はありません。

葬儀費用と相続放棄

故人の遺産から葬儀費用を支払うことは一般的ですが、
相続放棄する場合も認められるのでしょうか。

結論からいうと、相続放棄をする場合でも遺産から葬儀費用を出すことは認められています。

相続放棄する場合は、故人の遺産には一切手をつけてはいけないことになっているため、安易に故人の預金に手をつけることはおすすめしません。
しかしながら葬儀の費用として妥当なものだと判断される場合は、故人の遺産から葬儀費用を出したとしても相続放棄が認められるのです。

妥当な葬儀の費用ですが、葬儀費用の全国平均が135万円なので参考になります。
大会社の会長とかはもっと多くても妥当でしょうし、最近は家族葬も増えてきているので
もっと少ない金額しか認められないと思います。
常識範囲内の葬儀費用だったら大丈夫だと思います。
但し、香典返しや墓石の購入は認められないとされています。

相続を放棄することができる理由

どんな場合に相続放棄をすることができるのでしょうか。
借金が多い場合しか、相続を放棄することができないとお考えの方が
多いのではないでしょうか。

裁判所が用意している「相続放棄申述書」によると、放棄の理由として
以下の6つが用意されています。

1.被相続人から生前に贈与を受けている
2.生活が安定している
3.遺産が少ない
4.遺産を分散させたくない
5.債務超過のため
6.その他

債務超過のため放棄をされる方がやはり多いです。
3番4番は経験したことがないです。

生前に被相続人と何らかのトラブルがあって疎遠になっている、とか
両親が幼いころに離婚して長年会っていないとか様々な理由により、
被相続人の相続に関与したくないというご相談も数多くあります。
その場合は「その他」を選択して、事情を簡便に記載すれば大丈夫です。

遺留分の権利が強すぎると思う件

遺留分とは、被相続人の遺産のうち、兄弟姉妹を除く法定相続人に対して保障される、
最低限の遺産取得分のことです(民法1042条1項)。

この遺留分の権利。強すぎないかって思うんですよね。

私が遺言執行者として関わっている案件です。

Aさんがお亡くなりになりました。
相続財産は5000万円。
Aさんは遺言書を遺しており、財産全部をAさんの身の回りの世話をしてくれた
姪っ子3名に均等に遺贈するというものでした。

さて、Aさんには一人息子のBさんがいます。
Bさんは障がい者で、病院暮らしです。
結婚はしておらず、子供もおりません。(相続人がいない)
すでに高齢で社会復帰の可能性もありません。
Bさんが困らないよう、成年後見制度を利用して、金銭的な援助は十分に施してあります。

ここでAさんが亡くなりました。
遺言書があるとは言え、Bさんには遺留分を請求する権利があります。
その金額2500万円。
成年後見人から姪っ子に遺留分の請求がきました。

Bさんの権利は法律で認められた正当なものだというのは分かるのですが、
Aさんを長年面倒見てきたのは姪っ子達。
Bさんには十分な援助をしており、仮に相続したとしてもその財産を承継させる
相続人がいません。

今現在弁護士にお願いして訴訟となっております。

ただ言えるのは、誰も間違っていないということ。
Bさんの権利は正当だし、後見人の主張も正当。
姪っ子の言い分も正当。
ただただ遺留分の権利が強すぎるんですよね。

欧米では、遺留分を請求できるのは配偶者と未成年の子供だけで、
成人に達した子供の遺留分はないそうです。
日本もこれに倣って欲しいなと思います。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が
令和5年4月27日に施行されています。

社会問題となっている所有者不明の土地の発生を予防するため、令和6年4月1日から相続登記の義務化がスタートしました。
いくら義務化されたとはいえ、今はもう誰もいない田舎の土地の名義を積極的に引き受けようとする人は少ないだろうと思われます。
そのためそのような土地を引き受けても、最終的には国庫へ帰属させることができれば創造登記が義務化されても問題ありません。
そのような理由でできた法律が「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」です。

申請できる人はだれ?
相続または遺贈により所有権を取得した人です。
売買によって取得した人は申請できません。
この法律が施行される前の相続でもかまいません。
数十年前に相続した土地でも対象となります。

申請の対象になる土地はどんな土地?
①建物がある土地
②担保権や使用収益権が設定されている土地
③他人の利用が予定されている土地
④土壌汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(以上法2条3項)

⑥一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
⑦土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
⑧土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
⑩その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
(以上法5条1項)

以降で細かく述べていこうと思います。

証券会社の相続手続き~野村証券の場合その2~

野村証券の相続手続きの後日談です。

流れとしては以下のようになります。
1.2月22日 相続依頼書等書類一式を送付
2.3月 7日 登録住所宛(私の自宅)に書類が届くかどうかの
確認の案内文が届く
3.3月14日 口座開設済みの案内のハガキが届く
4.3月18日 野村証券から電話がかかってくる。
この電話で売却手続きを進める。
「指値ですか?成行ですか?」など聞かれ、とてもあせる。
持っている株を順次売却していく。
次々と売買が成立していくので、株の取引ってそんなに頻繁に
行われているのかと妙に感心する。
10分ぐらいで全ての株の売却が終わる。
私の口座は役目を終え、閉鎖される。
(一週間程度の命やったかぁ~~)
5.3月22日 指定口座に売却代金が振り込まれる。
依頼主に完了の旨を伝える。

相続手続きを始めてから終わるまで、ざっと3ヶ月程度でした。