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月別アーカイブ: 2022年2月

大規模災害被災後の生活再建のてびき④~紛争・トラブル~

大規模災害の被災地では、生活再建を進めるに際して多くのトラブルが発生します。
賃貸借契約、雇用、労働問題など、トラブルの内容は多岐にわたります。
ここでは代表的なトラブル事例をQ&A方式で紹介します。
被災後はどのようなトラブルが生じやすいのか事前に把握しておきましょう。

「修繕」
Q1.災害で借りている家が一部損壊しました。借家の修繕を大家に要求することはでき
ますか?
A1.大家は建物の修繕義務があり、大家に対して修繕を求めることができます。
また修繕期間中、建物を一時退去するよう大家から求められた場合には、賃借人は
これに応じる必要があります。

「立ち退き」
Q2.地震で一部損壊した借家に住んでいます。損害部分を修繕してもらって住み続けた
いのですが、大家は多額の費用がかかるため、建物を取り壊したいと言っていま
す。借家からの退去をもとめられていますが、退去しないといけないですか?
A2.退去しなければいけないかどうかは、建物の損壊の程度だけでなく、修繕にかかる
費用、建物の耐用年数など様々な要素を総合的に判断して決定されるため、一概に
は言えません。取り壊しの妥当性、再築の有無や再築後の再入居の可否、立退料な
どの補償の有無などについて、大家と細かく話し合う必要があるでしょう。

「屋根瓦の落下」
Q3.地震で自宅の屋根瓦が落ちて、隣家の車を傷つけてしまいました。この場合、賠償
責任はありますか?
A3.屋根瓦が落ちて生じた損害の賠償責任は、所有者の場合は無過失責任です
地震などが発生したときに、屋根瓦などの工作物の瑕疵によって損害が発生した場
合には、持ち主(所有者)やその管理者(占有者)は、その瑕疵が損害発生に影響
を及ぼした程度に応じて責任を負うことになります。ただし、その屋根瓦が本来備
えるべき安全性を有していたことが立証できた場合には、工作物の瑕疵は認められ
ず、占有者や所有者の責任とはなりません。

「障害物の除去」
Q4.土砂などの障害物を取り除けば自宅に引き続き住めそうな場合に利用できる支援策
はありますか?
A4.災害救助法による障害物の除去は、災害によって土石、竹木等の障害物が自宅やそ
の周辺に運び込まれ、一時的に居住できない状態にある場合に、市区町村が業者等
に委託してこれを除去するものです。
障害物を除去して元の自宅に引き続き住むことが目的ですから、この制度を利用し
た場合は、応急仮設住宅に入居できないとする運用になっていることが多くありま
す。

「災害廃棄物の除去」
Q5.全壊家屋のがれきや、自宅敷地内に流れ込んだがれきなどを撤去する場合、費用に
関する支援制度はありますか?
A5.災害等廃棄物処理事業として、支援を受けられることがあります。この場合、被災
者が業者等に依頼して、自費でがれきなどを撤去した後でも、り災証明や撤去作業
に関する領収書、作業前後の現場写真などを添えて市区町村に申し込めば、撤去費
用の支払いを受けることができる扱いが過去になされています。

「仕事のトラブル」
Q6.会社が被災したため、失業して収入がなくなりました。何か支援策はありますか?
A6.災害救助法が適用される被災地の事業所に雇用されていた人であれば、災害により
会社が休業し賃金が支払われない場合や、事業再開後に会社に戻ることを約束して
一時的に離職した場合でも、雇用保険の失業手当を受給できます。詳しくは最寄り
のハローワークに問い合わせましょう。

 

大規模災害被災後の生活再建のてびき③~支払いの減免~

前回は、お金の給付金についてのお話でした。
今回は、支払いの負担を軽減するお話です。

災害発生直後、被災者にとって大きな負担となるのが、各種ローンや税金、社会保険料、公共料金等の月々の支払です。大規模災害で被災した場合には、こうした各種支払いの減免や納付期限の延長などの措置を受けることができます。

① 自然災害債務整理ガイドライン
災害で被災して住宅ローンや自動車ローン、事業性ローンなどを支払うことができな
くなった時、一定の条件を満たせば「自然災害による被災者の債務整理に関するガイ
ドライン」を利用して、これらのローンの免除・減免を受けられる場合があります。

メリット その1 個人信用情報に登録されない
破産などの手続きとは異なり、債務整理したことは個人信用情報
として登録されません。そのため、その後の新たな借り入れにも
影響が及びません。
その2 財産の一部を手元に残せる
預貯金などの一定の財産をローンの支払いに充てずに手元に残す
ことができます。具体的には、最大500万円の現預金、家財地
震保険金最大250万円、被災者生活再建支援金、災害弔意金、
災害障害見舞金といった財産を残せます。
その3 手続き支援が無料
国の補助により、弁護士等の「登録支援専門家」による中立・公
平な立場からの手続き支援を無料で受けられます。
残念ながらこの登録支援専門家に司法書士は含まれておりませ
ん。

② 公共料金等の特別措置
都道府県や市区町村では、各自治体が所管する上下水道などの料金や施設使用料、保
育料等が軽減・免除されることがあります。また電気、ガス、固定電話、携帯電話、
インターネット、NHKの放送受信料、保険料、共済掛け金などの料金についても、
支払いの減免や期限猶予などが受けられる場合があります。自治体及び契約各社のホ
ームページを確認したり、窓口に問い合わせたりしてみましょう。

③ 税金、社会保険料の特別措置
税金や社会保険料等の支払いについては、減免や猶予、期限の延長などの措置が取ら
れる場合があります。税務署や自治体の窓口に問い合わせ、相談しましょう。

大規模災害被災後の生活再建のてびき②~お金の支援~

被災直後の生活を支える給付金

災害で住宅を失った世帯や働き盛りの家族を亡くした遺族に対しては、返済する必要のない給付金が用意されています。
被災者向けに低金利で返済期間が長く設定された貸付制度もあり、被災直後の生活資金の確保に役立てることができます。
これらの支援制度には、災害の規模、被災の程度などに応じた適用条件が定められており、まずは市区町村等の窓口に問い合わせましょう。

〇被災者生活再建支援金
災害によって住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対して、
最大で300万円支給されます。
・被災した住宅が賃貸の場合でも支給対象です
・被災時に現に居住していた世帯が対象です。
・支援金の使途は自由です。災害直後の困難な時期に頼りになる給付金です
・差押禁止財産となっているため、「自然災害債務整理ガイドライン」を利用しても
再建資金として手元に残せます
【問い合わせ先 市町村】

〇災害弔慰金
災害によって亡くなったり、行方不明になったりした人の遺族に支給されます。
災害による直接的な被害で亡くなる場合だけでなく、避難後に体調を崩して亡くなる
など災害と因果関係がある「災害関連死」の場合も対象です。
【問い合わせ先 市町村】

〇災害障害見舞金
災害によって心身に重度の障害が出た場合に支給されます。
【問い合わせ先 市町村】

〇義援金
義援金は、被災者支援を目的にした善意の人々からの寄付金です。
日本赤十字社や中央共同募金会などを通して集められ、被災自治体に送られます。
実際に受け取ることができる金額は、家族の人的被害や家屋の損壊状況などの被害程度
や、住んでいる地域によって異なります。
【問い合わせ先 市町村】

〇災害援護資金
災害で負傷した人、住居・家財に一定の損害を受けた人は生活再建に必要な資金を
借りることができます。
【問い合わせ先 市町村】

大規模災害被災後の生活再建のてびき①~まずは、り災証明を取得しよう~

り災証明書とは、地震や風水害で被災した家屋の被害程度を市区町村が証明するものです。
被災者からの申請が必要となります。
り災証明書は、被災者生活再建支援金の支給・税金や公共料金等の減免、各種融資の申請など、各種支援制度を利用する際に必要となる重要な書類です。

まずはり災証明書を取得しましょう!
り災証明書の取得の流れ
1.被災者から市区町村への申請

2.市区町村の調査員による被害状況の調査

3.り災証明書の交付

4.各種被災者支援制度の活用

り災証明書の交付までには1ケ月程度かかる場合があります。
とは言え、後片付けを始めて生活の再建を進めなければなりません。
片づけを始める前に、被災した状況の写真を撮って記録を残しておきましょう。
家屋の外観だけでなく、室内の様子も撮影しておきましょう。
撮影した写真は、損害保険金の請求手続きの際にも役立つことがあります。

被害の認定区分について
損害の割合        被害の程度
50%以上      →  全 壊
40%以上50%未満 → 大規模半壊
30%以上40%未満 → 中規模半壊
20%以上30%未満 →  半 壊
10%以上20%未満 →  準半壊
10%未満      → 一部損壊

全壊というと、家屋の大部分が損傷しているイメージですが、50%以上の損害で
全壊の認定を受けれます。