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日別アーカイブ: 2024年12月3日

家族信託を利用すべきか否か

今回はセカンドオピニオンとして相談を受けた案件で、
相談者に家族信託ありきで話をもっていくのはどうかという話です。

家族構成は、父・母(共に79歳)・兄(51歳)・妹(48歳)。
兄は知的障害があり、意思表示は無理。現在施設に入所中。
財産は、不動産(自宅 父母共有名義)と預貯金。

父・母亡き後のお兄様の生活を心配して案じていたところ、
家族信託の情報を聞き、とある機関に相談したところ
父と母の家族信託でそれぞれ100万円ずつかかると言われたそうです。
その金額に驚き、以前妹の夫の相続関係で関与した私のところに
相談が入りました。

1.もしお父様(お母様)が亡くなったら
相続が発生します。
遺産分割の協議が必要な場面ですが、お兄様が意思表示不能です。
協議できません。そこで成年後見制度の登場です。
お兄様には成年後見人が付きますが、これはお兄様がお亡くなりになるまで
永続します。月2~3万円が発生します。これは避けたい。
ということで、お父様とお母さまのそれぞれの遺言書の作成は必須手続きと
なります。
2.もしお父様(お母様)が認知になったら、預貯金はどうする?
妹が、認知症であるお父様のお金を勝手にいじることはできません。
お父様が認知症になる前に家族信託契約を締結しておき、金銭信託をしておけば
問題なくなるでしょう。
ここでお母様がおっしゃいました。
「今まで娘を信頼してきたし、これからも娘を信頼していくし、
頼れるのは娘しかおらんのやし、娘の自由にしてくれたらええのちゃいますの?」
お母様のおっしゃること、本当にそうなんですよね。私もそのように考えます。
娘への信頼を書面にするだけで大金がかかるのはよく分からないというわけです。
例えば、ここにもう一人の兄弟がいて、その兄弟がややこしいことを言ってくる
可能性があるのなら、信託契約をしっかり巻いておく必要性が出てくるかと思いま
す。
今回は、家族信託を形成する必要性は低いと思います。
3.もしお父様(お母様)が認知になったら不動産はどうする?
共有名義なので、どちらかが認知になったら不動産を売却することはできなくなりま
す。将来的に小さなマンションへの引っ越しや施設代にするための売却を考えるのな
ら、認知症対策として不動産を娘名義に信託で移しておくことが有益です。
そして不動産の家族信託を考えるのなら、ついでに先ほどの預貯金の信託も併せてや
っておいた方がいいのかなと思います。
家族信託を利用するかどうかは、家族会議で検討してもらうことになりました。
問題点を共有するために2時間ほど時間を要しましたが、
「何だか方向性が見えてきてすっきりしました」との言葉を頂戴し、
私もそっと胸を撫でおろすのでした。